更衣篇

「あれ? 優ちゃんは女の子なのに、何でおちんちんがついているのかな?」
 笑みを浮かべ俺の顔を覗き込む千尋に対し、俺は歯を食いしばって顔を背けることしか出来なかった。


 千尋の部屋で女装させられた後、俺が彼女ら三人に無理やり引っ張られてつれてこられたのは、市内でもソコソコ大きいレジャーランドのプールだった。
 しかもここに来るまで「お姉ちゃんとお出かけでいいわね」なんて、見ず知らずのおばあちゃんに声をかけられ、更には小学生料金で入場したにもかかわらず、係員は完全にスルー、女子更衣室につれてこられても誰も何も変に思わない。
 こっちは恥ずかしさで顔も上げられず、紗枝と綾に手引っ張られているだけだ。
「こ、こんなところで誰か知ってるヤツに見つかったらどうするんだよ」
 なんて俺の言葉も完全に無視して、俺は更衣室のはじの人気のまばらなところまで連れてこられた。
「さ、お着替えしようか」
 そう言っていきなり千尋が俺が着ているワンピースに手を書けたので、俺はとっさに体をひねってその手をはずす。
「な、何するんだよ!」
「何って、水着に着替えるに決まってるじゃん、何しにプールに来たと思ってるの?」
 俺の言葉に千尋は平然とした顔で答える。
「だ、だってここ……」
「優ちゃんはあたしたちの妹でしょ?」
 そういいながら千尋は俺の耳元に口をち被けると周囲に聞こえないような声でこう付け加えた。
「あんまり騒ぐと、男の子だってばれちゃうよ」
「う……」
 そういわれると俺には反撃のしようもない。
 大体俺はこの三人に完全に弱みを握られているのだ。今まで撮られた動画や写真をたてにされたら反抗の使用がないのだ。
「じゃあ、綾お姉ちゃんと、紗枝お姉ちゃんと手を繋いでなさいね」
 千尋がそういうと綾と紗枝が俺の両手を取り万歳をさせる。そしてそれを見計らったかのように、千尋が俺のワンピースの裾に両手を入れるとショーツのゴムをつかみゆっくりと下ろす。
「はい右足上げて、次は左足」
 その言葉に従って俺が足を上げると、彼女は俺から完全にショーツを脱がした。
「じゃあ、次はワンピースね」
「え?」
 千尋の言葉に俺は耳を疑う。パンツを脱がしたら当然次は水着をはかせるものだと思っていたからだ。
「どうしたの?」
 躊躇した俺の態度を見て、千尋は首をかしげる
「だ、だって見えちゃう……」
 蚊のなくような俺の声に対して、千尋はこう返してきた。
「大丈夫だよ。そんなちっちゃいの遠くから見えないし、見られたって誰も中学三年生とは思わないから。小学生が着替えの手伝いしてもらってるようにしか見えないよ」
 こ、こいつら最初っっからここで俺を裸にするつもりだったんだ……。


「あれ? 優ちゃんは女の子なのに、何でおちんちんがついているのかな?」
 笑みを浮かべ俺の顔を覗き込む千尋に対し、俺は歯を食いしばって顔を背けることしか出来なかった。
 女子更衣室で三人の同級生に囲まれたまま一人だけ素っ裸にされた俺は、両手を紗枝と綾につながれてチンコを隠すことも出来ないで、突っ立っている事しか出来ない。
「お姉ちゃん何してるの?」
 突然背後から声がした。
 振り向くとそこには綾に似た少女と、もうひとりの少女が水着姿で立っている。
「あれ、麻衣ちゃんに真冬ちゃんじゃん」と、千尋
千尋先輩っ! それに綾先輩も!」
 綾に似た少女が嬉しそうな声をあげる。
「……!?」
 そして綾に似た子は俺の顔を見て少し怪訝な顔をする。
誰だこの二人? 一人は綾の妹みたいだけど……千尋たちを先輩と呼ぶって事は、まさかうちの学校の?
物凄い不安が俺の頭の中をよぎり、それは的中した。
麻衣と呼ばれた子は綾の妹で、もう一人は柊真冬という名前で麻衣の友達。
しかも二人ともうちの学校の一年生……。
だけど、幸いにも俺の事は知らなかったみたいだ。
俺はほっとしながらも、ばれたときのことを考えると、恐怖で身体が縮みあがりそうだった。
「お姉ちゃんこの人……?」
 麻衣が不審そうに俺の顔を見た。
当然だろう、同年代の男が女子更衣室に入っているんだ。
「この子はわたしん家の近所に住んでる優君って言うの、小五なんだ。ほら、優君お姉ちゃんたちに挨拶」
 すかさず千尋がフォローを入れる。 
 そしてお姉ちゃんたちに力を込められた言葉に、俺は従うしかなかった。
「こんにちは、我妻優です。お、おねえちゃん、よ、よろしくおねがいします……」
 本来なら後輩であり、自分を先輩と呼ぶはずの少女たちを、お姉ちゃんと呼ばねばならない屈辱に耐えながらも必死に声を絞り出すと、ぺこりと頭を下げた。
「ふ〜ん、小学五年生の優君ねぇ……。優君は五年生にもなって女子更衣室で着替えるんだ?」
 麻衣は俺の顔と股間を少し照れた顔でじろじろと見る。
その視線に耐え切れずに、俺はうつむいてしまうしかなかった。
彼女の言うとおり五年生にもなれば男子更衣室でひとりで着替えることが出来て当然で、女子更衣室でお姉さん達に着替えを手伝ってもらうなんてありえないことだ。
「麻衣ちゃん! 見てみなよこのおちんちん」
 そう言うと、千尋は俺のチンコを摘まんだ。突然のことに俺はどうすることも出来ずなすがままだった。
千尋は俺の顔をチラッと見てから、麻衣に向かってこう言った。
「こんな毛も生えてない赤ちゃんみたいなおちんちんなんだよ? 男なんかじゃなくてまだまだ子供、女子更衣室であたし達が着替えさせてあげるのが、当然だと思うんだけど?」
 にこりと微笑む千尋
 麻衣はその千尋の顔と、俺のチンコをしばらく見比べる。
俺はどうしていいかわからなかった。
女子更衣室で同級生の女子にチンコを摘ままれ、それを赤ちゃんみたいだなんて一年生の女子に説明されるなんて……。
ありえない、こんな事あるなんて考えられない。
「確かに小さいです」
 突然横から口をはさんできたのは、今まで黙っていた真冬だった。
「わたし、小三の弟がいて一緒にお風呂入ったりするんですけど、その弟の方がちょっと大きいと思います」
「……!!!」
 その言葉に、俺はうつむいたまま歯を食いしばった。
 小学三年生より小さい?
小さいのはわかっていた。
 だけど、小三より小さいなんて……それを、中一の女子に指摘されるなんて……。
顔がかっと熱くなる。
「へえ〜、小学三年生より小さいんだぁ」
 綾はわざとらしくそう言うと「ホントは中三なのにネ」と耳元でささやく、そして千尋が「小三より小さいんじゃ、小二くらいかな? 小二だったら女子更衣室入っても問題ないから、小二のおちんちんの優君も問題なし!」と断言すると、人差し指で俺のチンコをはじく、俺は顔を真っ赤にしてうつむきながら、必死に恥辱に耐えることしか出来ない、騒ぎを起こして本当の年齢をばらすことだけはしたくなかった。