公開篇

「ま、まってよ、恥ずかしいよ」
 俺、我妻優は全裸のままふたりの一年生に両手をつながれて女子更衣室を歩いている。
「優君、お姉ちゃんたちの手を離しちゃダメだかね」
「迷子になったら大変」
 手を引くふたりの一年生。
 ひとりはクラスメイトの本田紗枝の妹、本田麻衣。
 もうひとりはその麻衣の友達、柊真冬。
 俺は両手をつながれているために股間を隠すことも出来ない。その目にすれ違う人の目がみんな俺の股間に集中するように感じる。
 大人の女の人、女子高生、俺と歳の変わらないような子、小学生、幼稚園児……。
 みんな見てる、みんな俺の裸を、俺のチンコ……いや、おちんちんを見ている……。
 どんな風に思ってるんだろう。
 変態とか思っているんだろうか? それとも姉に連れられた小学生が裸でいるくらいにしか思っていないのだろうか?
「お、おねえちゃんたち待ってよ」
 俺は強引に立ち止まる。
 おねえちゃんと呼んだのか彼女らが俺のことを小学五年生と思っているからだ。
 すると麻衣が俺を見下ろしながら首をかしげこういった。
「どうしたの優君、女の子におちんちん見られて恥ずかしいの?」
 麻衣の言葉に俺は頷いた。
 すると真冬が横から口を挟んでくる。
「大丈夫、誰も優君のおちんちん見たってなんとも思わないよ。だってほら見て」
 真冬の視線の先には幼稚園児の男の子が素っ裸で立っている。その横にはその男の子の母親らしき女性もいる。
「優君のおちんちんとあの子のおちんちん、大きさも形も全然変わらない。そんなおちんちん見ても女の人はなんとも思わない。
 それにあの男の子だってちっとも恥ずかしがっていない。だからおんなじおちんちんの優君も恥ずかしくない」
 その真冬の言葉はかなり大きく、周囲の視線が一気に集まってくる。
「ねーねー、何であんな大きい男の子がいるの?」
「なんかおちんちんが小さいって話してたけど」
「あんな大きい子なのに、幼稚園児と同じくらいのおちんちんなんだって」
「うわっホントにちっさ」
「え〜全然見えないよ? ホントのに男の子? おちんちんあるの?」
「ほら、よく見てみなって、小指の先みたいなのがついてるじゃん」
「あ、本当だ」
「でも、あんなのだったら全然いやらしくないよね」
「むしろかわいいかも!」
 周囲のざわめき声がどんどん広がってゆく。
「あら、本当にかわいいおちんちんね」
 そんな声の中、男の子の母親らしい女の人は男の子の手を引いてこっちのほうに向かってきた。
 そしてその子のおちんちんと俺のおちんちんが並ぶような高さまで男の子を抱き上げる。
「わっ、ホントに大きさ変わらないんじゃない?」
「むしろ幼稚園児より小さいかも……」
 容赦のないふたりの後輩の言葉。
 中三なのに幼稚園児とちんちんの大きさが変わらない、むしろ負けているなんてことを年下の女の子たちにこんな風に指摘される事なんて、そんな事が現実にあっていいのだろうか?
「ぼく何年生?」
「五年生ですよ」
 突然の母親の質問に俺が答える以前に麻衣が答えてしまう。
 歳は三十歳にはなっていないだろう。すらりと背の高いかなり綺麗なお母さんだ。
「へ〜五年生ねぇ」
 じろじろと俺の顔とちんちんを見比べる母親。
 もしかしてばれたのか? 俺が小学生じゃないってことを……。
 だけど次に母親から出てきた言葉は、更に俺をどん底に落とすものだった。
「ホントに五年生なの? それにしちゃおちんちん小さすぎるわよ? いくらなんでも幼稚園のタクちゃんと変わらない大きさだなんてねぇ」
 そう言って俺のおちんちんをもみもみともみ始めた。
 ちょ、それはマズイ。そんな事されたら……あれ? なんで?
 こんな綺麗な女の人に触られているのに、俺のおちんちんは全然硬くならない……。そういえばさっき千尋に触られたときもなんともならなかった。
 千尋の家で触られたときはあんなにカチカチになったのに……。
「でも、本当に五年生なんですよ」
と、麻衣。
 その声はちょっと緊張気味だ。全くの他人が介入してきた事に少し緊張しているのだろうか?
「だけどねお姉ちゃん、五年生にもなって女の人にこんな風に触られたら男の子だったらおちんちん硬くなるって知ってるわよね?」
「え、はい」
「でも、この子なんともならないわよ」
「そう言われてみれば……」
 三人の視線が再び俺の股間に集中する。
「おちんちんが赤ちゃんだから、性能も赤ちゃんのまま」
 ぽつりとつぶやく真冬。
 何なんだここ女は! 口数が少ないくせに、一言一言が的を射ていて俺の心に突き刺さりやがる。
「そうなのかしら?」
 母親はそういいながらも俺のちんちんをもむのをやめない。
「あの、あたしたちそろそろ行きたいんですけど?」
「あら、ごめんなさいね。あんまり小さいから触ってるの忘れてて」
 麻衣の言葉に母親はさらりと物凄いひどいことを言ってあわてて手を離し立ち上がる。
「あなたたち今から泳ぐの?」
「そうです」
「でも、ぼくちゃんかわいいおちんちん丸出しじゃない」
 真冬の言葉に母親は首をかしげる
 そりゃそうだ、五年生にもなってプールに裸ではいるやつもいないだろう。
「あたしのお姉ちゃんが用意した水着を嫌がったんで」と麻衣。
「そうなんだ、でも裸じゃ係員さんに止められると思うけど?」
 そうか! そういやそうだよな! 注意書きの張り紙にも「裸での遊泳は禁止」って書いてあったはずだ。
 もしかしてプールにまでは連れて行かれないで住むかも!
 という俺の淡い期待は一瞬で消え去った。突然目の前にカラフルな布地がつるされるとともに、背後から俺をこんな状況にした人物の声が聞こえたからだ。
「じゃあ、やっぱりこれ穿いてもらおうか」
「あ、お姉ちゃん!」
「先輩」
 声の主は当然千尋、目の前につるされた布はさっき俺に穿かせようとしたのとは違う水着だった。
 これだけもたもたしていれば当然といえば当然だが、千尋たち三人は水着に着替え(といっても上を脱いだだけだが)俺たちに追いついてきた。
「まだこんな所にいたの?」
 ちょっとあきれた声の紗枝。
「ごめんなさいね、わたしが足止めしちゃったみたいね」
「あれ? 小島先生じゃないですか」
 謝罪する母親に対しての紗枝の反応に俺は思わず紗枝の顔を凝視してしまった。
 せ、先生? まさかうちの学校の?
「お姉ちゃん知ってるの?」
「知ってるも何も、今年からうちの学校に転任してきた養護教諭の小島先生じゃない。麻衣あんた知らないの?」
 養護教諭? 保険の先生って事? 保健室になんて全く縁のない俺は保険の先生の顔なんて全然知らなかった。
「あら、本田さんじゃない。こちらは妹さん?」
「は、ハイ、1年3組の本田麻衣です」
「うちの生徒だったのね。だめよ男の子いじめちゃ」
 緊張気味で返事をした麻衣に小島先生は優しげに微笑む。
「本田さんも志田さんもこのかわいいおちんちんと知り合いなの?」
 ちょ、おちんちんと知り合いって俺の人格は無視かよ! だけど助かった。小島先生は俺のことを知らないようだ。まあ俺も先生のことを知らなかったんだから当たり前かもしれないけど……。
「うちのとなりに住んでる我妻優君って言うんです」
 先生の質問に返事をしたのは千尋だった。
「うちの町内会が旅行でどっちも両親が留守にしてるからあたしが面倒見てるんですよ」
「へ〜面倒見が良いのね志田さん」
「ええ、幼馴染みですから」
 そういいながら千尋は俺に視線を移すと「ほら、優ちゃんいくらちっちゃいおちんちんだからって、いつまでも出しっぱなしじゃダメでしょ。これ穿きなさいよ。麻衣ちゃん穿かせてあげて」と、麻衣に水着を手渡す。
「わかりました。優君足上げて」
 麻衣は俺の前に跪くと水着を広げた。