名門聖グレゴリオ学園2
「ねえねえ、昨日のサッカー部の話し聞いた?」
「ああ、男子がフリチンでグランド走らされたってヤツ?」
今朝から学校中の運動部での話題はこれ一つだった。
男子サッカー部の一年生全裸で校庭罰走。
突然の共学化と、男子運動部の設立による女子部へのしわ寄せに怒りを感じているあたしたち女子運動部員には、久々にスカッとするニュースだった。
「橘さんもやるわね」
そうあたしに声をかけてきたのは、我がバスケットボール部キャプテンの川上紀子。
そしてあたしは二年生で、バスケ部の一応エースの真壁伊佐美。
男子の入学を快く思っていない女子生徒の一人だ。
「うちもそんな事やりたいね」
三年生の一人がそうは言うものの、うちとサッカー部では状況が違っていた。
実力のない新入生ばかりの男子サッカー部と違い、男子バスケ部は全国からそれなりに優秀な男子をスカウトで集めていて、一年の女子じゃとても太刀打ちできない。都内でベスト4のレギュラーだって男女の体格差を考えると、簡単に勝つことも出来ないだろう。
「うちの一年生が男子相手に試合して勝てると思いますか?」
「そりゃきついね、ハンデでもあれば別だけど」
あたしの言葉にキャプテンは肩をすくめて答える。
「そっか! ハンデがあればいいんだ!」
そういって立ち上がったのは副キャプテンの野田さんだった。
「え? 試合ですか?」
川上キャプテンの提案に怪訝な顔で応答するのは、男子部のキャプテン山野辺敦。
中学時代は全国でベスト8のチームのキャプテンだった子を、うちの顧問がコネと口八丁で勧誘した逸材だ。
当然一年のほかのメンバーもそんなレベルの子ばかりで、人数は8人と少ないけれどかなりの精鋭ぞろい。今年のインターハイは無理でも経験をつんだ来年再来年にはかなりの所まで行けるのではないかと、業界内でもかなりの前評判のチームだ。
それに比べあたしたちは都内ではトップクラスなものの、全国の経験はゼロ、全国的にスポーツの名門で有名な我が学園の中ではちょっと肩身が狭い部でもある。
「もうすぐ予選じゃない、練習試合もそうそう組めないしあなたたちならレベル的に高いから練習相手にいいと思ってね」
そういうキャプテンの言葉を山野辺君は怪訝な顔で聞いている。
そりゃ当然だ。彼らだって昨日の男子サッカー部の話は聞いているに違いがないのだ。
「でも、負けたら罰ゲームとか言い出すんじゃないですか?」
「え? まさかあなたたち、あたしらに負けるかもって思ってるの?」
キャプテンのその言葉に山野辺君のこめかみがぴくりと動くのがあたしからもわかった。
「そうだよね? まさかエリートぞろいの男子バスケ部が、全国大会にも出たことがないバスケ部(元々女子高のうちの学園では女子の運動部の名前の前に女子とはつけない)に負けるわけないもんね?」
「と、当然じゃないですか」
よし! 乗ってきた!
山野辺君のその言葉にあたしは心の中でガッツポーズをとった。
プライドの高い山野辺君がここで消極的な言葉を言うわけがない、野田さんが考えた作戦どうりに行きそうだ!
「そうよね? 多少ハンデがあったって、女子になんて負けたりしないわよね?」
「いいですよハンデぐらい、何でもつけて下さいよ」
「ホントに? どんなハンデでも良いの?」
「ええ、問題ないですよ。何ならなにかかけますか?」
この言葉で男の子たちの運命は決まった。
勝負にあたしたちがかけたのは名前だった。
「聖グレゴリオ学園バスケットボール部」
男子が勝ったらこれから先にこの名前を名乗る事が出来、女子は「女子バスケットボール部」と名乗る事になる。
伝統ある名前を男子に奪われでもしたら、あたしたちもOGにどんな目に合わされるかわかったものじゃない、だけど勝算があってこの賭けを持ちかけたのだ。
え? 男子が賭けたもの? そりゃ決まってるでしょ。
40分の死闘が終わるブザーが体育館響く。
試合結果は「75対37」あたしたち女子の圧勝だった。
ハンデの内容は二つ。
まずは男子のゴールは全部1ポイント。バスケのゴールは通常は普通のゴールが2ポイント、3ポイントラインの外からのゴールは3ポイント、フリースローが1ポイントだけど、これを全部1ポイントに。
二つ目は女子の退場なし。通常バスケットボールは一人の選手が5回ファールをしたらファールアウト(退場)になるんだけど、女子にはそれの適用をしない。ファールが怖くて出来ないようなディフェンスや、速攻を食らいそうな時にわざとファールをしたりして結構やりたい放題。
イラつく男子部のエース村井君を第2クォーター早々に退場に持ち込んで、第3クォーター終了時にはスタメン全滅。残りの10分は5人対3人でやりたい放題だった。
まあ、それでも75点しか取れなかったのは前半の男子のディフェンスの強さゆえだったんだけどね。
「さ、約束を守ってもらうわよ」
「ゴメンみんな。俺が勝手な約束したから」
川上キャプテンの言葉に真っ青になってうなだれる山野辺君。
「じゃ、もう一試合やってもらおうか? 早く準備してね」
あたしは両腕を胸の前で組んでにやりと笑みを浮かべた。
いつも生意気な口を利いているエースの村井君はものすごい悔しそうに、チョと気の弱い田所君は半分目に涙を浮かべながらそれぞれいろんな表情で服を脱いでゆくと、ひとりが脱ぐたびにどよめき声が体育館にこだまする。
「へ〜田所君って結構でかいじゃん! 気が小さいのにね!」
「おいおい工藤! いつまでも隠してるんじゃないよ! げっちっさ!」
「へ〜、村井って普段デカイ口叩いてるだけあってデカイしちゃんと剥けてるじゃん」
「なんだよ山野辺! キャプテンのお前が一番ちっさいの?」
ずらっと並ぶおちんちんをあたしたちがそれぞれ品評する中、一人だけ両手でしっかり隠しているのはセンターで身長が2メートル近い小室君だ。
「なんだよ! 小室隠してるんじゃないよ!」
「山野辺だって小さくたって出してるんだから、お前もちゃんと出せよ!」
「おい、工藤! 田所! 小室の両手はずせよ」
いつまでも隠している小室君に川上キャプテンは業を煮やし命令する。
そして、小室君の両脇についた工藤君と田所君が無理やり小室君の両腕を股間から引き離した。
「げ、なんじゃありゃ!」
「リーサルウェポン?」
「凶器だ! あれは凶器だ!」
小室君の手の影から出てきたのは、おちんちんというよりはペニス? いやコック?
ボッキしていないにもかかわらずかなりの大きさ、ってか凶悪にデカイ! ネットで見たことがある黒人のペニスみたいに大きいものだった。
あたしたち女子だけではなく男子たちの目まで釘付けになる。
「山野辺の10倍くらいあんじゃね?」
あたしがそう言うと山野辺君は泣きそうな顔になってうつむいてしまった。
「ほらほら、ハンズアップ! ハンズアップ! 手が下がってるよ!」
「何やってるのよ! 片手で止められるわけないでしょ!」
「全力で走りなさいよ! そんなちっちゃいおちんちんなんてちっともゆれないんだからさ!」
一年生の男女戦を見ながらあたしたち二、三年は大笑いで野次を飛ばしていた。
当然のようにあたしたちが勝った時の条件は「全裸で」一年女子と試合をするそれも、あたしたちとしたときと同じ条件で「勝つまで毎日1試合」だ。
「ちょっ! 何するんだよ!」
突然股間を押さえて大声で講義する山野辺君。
「ごめんね〜 ちっちゃいからおちんちんあるってわからなかった〜」
白々しく謝る愛子。その言葉に山野辺君はぐうの音も出なくなってしまう。
ちなみに愛子はあたしがかわいがってる一年生だ。
「ナイス愛子!」
あたしが親指を立てて愛子に声を送ると、愛子もこっちを向いて親指を立てぺロット下を出した。
その後はおちんちんを触ったり、おちんちんにボールを当てたりする子が続出。特に小室君は集中攻撃を受け、全然試合にならず、この試合も女子が圧勝した。
「この分じゃ卒業するまで毎日全裸試合だね」
あたしがそういうと男子たちはがっくりとうなだれた。