我妻優の憂鬱9

「ねー我妻、昨日レジャーランドのプールにいたでしょ」
 月曜の朝の教室。
 隣の席に座る生徒会長でもあるクラスメイトの宗橋由宇(むねはしゆう)。ショートカットにノンフレームのメガネをかけているが、メガネの下はかなりの美少女で、俺と同じで背が低く朝礼のときはいつも俺の隣に並んでいるんだけど、スタイルはかなりよくて、ねらっている男子も少なくないがみんな撃沈している。
 そんな彼女がホームルームもそろそろ始まろうかと言う時間にかけてきた突然の一言で、俺の体は凍りついたように動きが止まった。
「な、なななな、何のことかな?」
 白を切ろうと思ったが完全に動揺してドモっている俺。
 宗橋はそんな俺の状態を見て、笑みを浮かべながら小声でこう続けた。
「昨日あたしさ、受験勉強の息抜きに彼氏とプールに行ったんだよね、そしたら裸で遊んでる男の子がいたんだけど、小学生かなっと思ってたらなんか見たことあるかなんだよね。
 で、よく見たら毎日見てる顔じゃない、しかもこんなに近くでさ」
 そういいながら宗橋は右手の人差し指をメガネの縁にかける、その一瞬レンズの向こうにある目がきらりと光った気がした。
 こいつ彼氏がいたのかどうりてみんな撃沈するわけだ……って彼氏と一緒? 他にも見たヤツがいるの?
 すると俺の表情を見て何か悟ったのか、宗橋は更に話を続けた。
「まあ、安心してよ、彼氏は大学生だから我妻のこと知らないしから」
「な、なんだ……」
 俺は思わずほっとため息を漏らす。そんな俺の事を見ながら宗橋は更にニヤニヤと笑う。
「なにほっとした顔して、否定はしないんだ?」
「……う」
「ま、否定しようにも千尋たちも一緒だったし、どう考えても我妻なんだよね」
 言葉に詰まる俺を見ながら彼女は喋るのをやめない。普段は必要以上にぺらぺらと喋るほうではないってのに。
「それでさ、あいつあたしの同級生だよって、彼氏に言ったら『中三であのチンコは国宝級の小ささだ』ってさ」
 俺の目を見ながら足を組んで据わる宗橋のその言葉に、俺は自分の股間が熱くなってくるのを感じた。


「入ってよだれもいないからさ」
 昼休み、俺が宗橋に連れてこられたのは生徒会会議室だ。
 普通の教室を半分に仕切った部屋に、長テーブルがコの字型に並べられパイプ椅子が置かれて前方の窓際には大きなモニターまである。
 今まで縁がなかった部屋につれてこられて俺はかなり緊張している。
 宗橋はおもむろにテーブルの上に座ると、俺にコの字に並べられたテーブルの真ん中に立つように命じる、そして……。
「何してんのよ、言わなくたってわかるでしょ? まずはズボンとパンツね」
 俺をニラミつけるとそう言い捨てた。
 ベルトに手をかけながら俺は戸惑った。
 宗橋の鋭い視線から感じる感情は、千尋たちのものとは何か違う。千尋たちの感情がプラスだとしたらコイツからはマイナスな何かを感じる。
「早く脱ぎなさいよ! あんな大勢の前で裸になるのが好きな変態なんでしょ? 今さらあたし一人が見たってなんともないじゃない!」
 もたもたしている俺を見てイラついた宗橋は、決して大きな声じゃないけどかなり鋭い口調で言い放った。
「なんで、何で脱がなきゃないんだよ……」
 そんなこいつの態度を見て俺は一つ賭けに出た。
 千尋たちには写真と言う弱みを握られたから言う事を聞いたが、こいつには見られたからと言っても俺が裸になってた証拠も何もこいつは持っていないんだ。
「なんで?」
 俺をにらむ宗橋。
 なまじ顔が整っている彼女に鋭くにらまれるとかなり怖いものだ。
「あ、あたしの言う事を聞くいわれはないってこと?」
 その言葉に俺は頷いた。
「なるほどね、千尋たちには何か弱みでも握られてたんだ。裸の写真でも撮られたとか。
 だけどあたしには弱みは握られてない、プールでの事もあたしが言いふらしても白を切ればいいことだしね、他に学校内の目撃者がなければ」
 俺は頷く事もしないで宗橋をじっとにらみ続ける。
 これは一種の賭け。
 多分コイツは俺が裸でプールにいた証拠なんて持っていない、それならばこいつの言うとおりいくらでもしらばっくれる事なんて出来る。
「でも残念だったね、証拠あるんだ」
 そういって宗橋はかたわらにおいてあったリモコンを手に取りモニターへ向けスイッチを入れる。
 するとモニターには全裸で千尋たちに手を引かれている俺の画像が映し出された。
「こんなのじゃダメ? まだまだあるよ」
 彼女がそういいながらリモコンを操作すると、モニターに映る画像は次々と代わっていく。それは全て俺が裸で玩ばれている姿が映し出されたものだった。
「これを視聴覚室の資料と入れ替えてもいいんだけど?」
 子悪魔のような笑顔でそう言う宗橋に俺は逆らう事が出来なかった。
 無言で俺はベルトをはずすとスラックスとトランクスをまとめて膝まで下ろして目の前の少女をにらみつける。
「これでいいか?」
 そんな俺の姿を宗橋はげらげらと笑いながら見ている。
「そ、そんなカッコウでにらまれたってちっとも怖くないってば。
 それにしても、ホントにちっこいね。そんなにちっこいチンコ初めて見た。皮も完全にかぶってるし、まさにチンコって言うよりおちんちんってのが似合ってるね」
 嘲笑する宗橋。
 俺はそれに対し黙って耐える事しか出来ない。全てが事実なのだから。
「上も脱いでよ、ズボンはそのままでいいからさ、脱いだらこっちに投げて」
 その言葉に従い俺はカッターシャツと下着代わりのティーシャツも脱ぐと、丸めて宗橋へと投げ捨てる。
 上半身は裸、下半身はズボンとパンツを膝まで下ろした状態で丸出し、靴下と上履きは着用。
「完全に変態みたいな格好ね」
 あざけ笑う宗橋。
「ねえ、それ起たないの?」
「え?」
 その言葉に今までうつむいていた俺はふと彼女のほうを見てしまう。
「まあ、この状況で勃起してたら変態だけど、プールでもずっと萎えてたし。まさかインポ?」
 俺は彼女の言葉にハッとした。
 確かに俺のチンコは千尋の家でイカされたときは完全に勃起していたんだけど、プールの更衣室やプールではいくらいじられても硬くなることがなかったからだ。
 だけど今朝はちゃんと小さいながらも朝起ちはしていた。
「ねえ起たせてよそれ」
 宗橋はそう言うもののそんな自由自在に起つわけもなく、それに俺はこんな追い詰められた状況で性的刺激もなく勃起するほどの変態じゃない。
「そんなおちんちんでオナニーできるか見てみたい」
 平然とした顔で言いたい放題の宗橋だが、俺の様子を見ると何か気がついたかのようにぽんと両手を叩き合わせた。
「あ、ゴメンゴメン、オカズがなくちゃオナニーできないんだよね」
 そして何を思ったか、突然机の上に立ち上がり両手をスカートの中に入れた。
「これがオカズになるかな?」
 自ら下着を脱ぐと右手の指に引っ掛けてくるくると回し始める。
「選択肢は二つ。このパンツでオナニーするか、あたしのオマンコを直に見てオナニーするか。どっちがいい?」
 思いもよらない生徒会長の言葉に俺は股間が熱くなってくるのを感じてきた。
「ほうほう、硬くなってきたようね、大きさは変わらないようだけど」
 芝居じみたような口調で喋りながら俺のことを見下ろしなおも選択を迫る。
「で、どっち? パンツ? オマンコ?」
 だけど俺にはそれを選択することが出来なかった。なんてったって俺はまだ精通がない、射精できないのだ。
 千尋たちにばれたこのことをコイツにまでバラスなんて……。
「言っとくけどオナニーしないなんて許さないからね、見たトコそのお子様ちんちんじゃ射精できないかもしれないけど、きっちりイクまで扱いてもらうからね」
 その言葉の俺は動揺が隠せなかった。
 見抜かれてる……! コイツ人の心を読むのがうますぎる!
「ふふ、どうやら図星みたいね。そのお子様チンコイケないんだ」
 俺は黙ってうつむいた。コイツにはどうやったって太刀打ちができそうもない。
「じゃあ、オマンコのほうがいいかな? そこにひざまずいて」
 俺は素直にその言葉に従った。
 完全に敗北、もう言いなりになったほうがらくだ。
「じゃあ、こう言いなさい『短小包茎で童貞なぼくに、ゆう様のオマンコを見ながらオナニーさせてください』ってね」
 その言葉に今さらながらこいつの名前が俺と同じ『ゆう』だってことに気がついた。