名門聖グレゴリオ学園1

「情けないんじゃないあなたたち?」
 怒気を込めたキャプテンの視線が、壁際に整列させられた十五人の一年男子たちに突き刺さる。

 ここは「聖グレゴリオ学園」の男子サッカー部部室。
 うちの学校「聖グレゴリオ学園」は去年までは聖グレゴリオ女学院って言う名前の、中高一貫教育カトリック系女子高だったんだけど、少子化の影響とかで今年から男女共学になったんだ。
 当然PTAやOGからの反対の声もあったんだけど、このまま女子高として続けていくと生徒不足で廃校になっちゃうかもしれないって事で、共学化が決まった。
 で、高等部、中等部にそれぞれ五十人の男子が新一年生として入学したんだ。
 聖グレゴリオ女学院はカトリック系の一貫教育以外にも、スポーツの名門校って言う面もあって、なかでもサッカー部は一昨年まで三年連続で全国ベスト4、そして去年はついに念願の全国優勝を成し遂げた長がつくほどの強豪チームで、そのキャプテンである橘先輩は二年連続得点王で去年のMVP、そして高校生にして日本代表のメンバーに選ばれている、女子サッカー界では知らない人はいない超一流の選手なんだ。
 あたしはと言うと、そんな橘先輩にあこがれてマネージャーとして入部した一年生で、今年から新設された「男子サッカー部」のマネージャーも兼任させられている。
 まあ、そんな事は置いといて、何でそのサッカー部のキャプテンである橘先輩が、男子サッカー部の一年生たちを怒っているかっていうと、それなりの理由あるわけ。
 コーチのいない男子サッカー部の面倒を、橘先輩は何かと面倒を見てきたんだ(だって男子サッカー部には橘先輩の弟が在籍してるんだもん)。
 それなのに今日の女子一年と三十分ハーフの練習試合で0対15で完敗。
 二分で一点取られてんだよ!
 それに点差だけじゃなくて試合中の男子部員たちの負け犬みたいな態度に先輩はぶちきれっちゃったんだ。

「いくら大差がついたからって、女子相手に途中で試合投げるなんてっ! あなたたちそれでも男なの? おちんちんついてないんじゃないの?」
(お、おちんちんって、やだなあ先輩……)
 橘先輩から発せられた思いもよらない単語にあたしは思わず顔が赤くなり、次の言葉に部屋の中の空気が一瞬に固まった。
「ついてるか確かめてあげるから。全員この場でズボンとパンツ脱ぎなさい」
(ちょ、いくらなんでもそれは……)
 こう思ったのもあたしだけじゃないはずだ。
 部屋にはあたしを含め三人の女子マネ、そして橘先輩を含んだサッカー部の幹部が五人と計八人の女子がいる。その中で男の子たちに下半身裸になれなんて……。
「お! いいですねそれ」
(え?)
「男だってんなら、証拠見せなさいよ〜」
「そうだ、ぬげぬげ〜」
(あ、あれ? 先輩たち……)
 あたしの考えとは反対に橘先輩以外の四人の先輩もはやし立て始めた。

「全員整列しなさい!」
「何やってんのっ! 前は隠さないっ、手は横よ!」
 十五人の一年生男子たちは上半身にTシャツ、下半身ははだかって格好でセンターラインに並ばされた。
 一年生部員とあたしたちマネージャーはグラウンドの外からだからよく見えないけど、グラウンドの中で男子の前で座っている二、三年生たちには彼らのおちんちんがよく見えているだろう。
 あたしとあと二人のマネージャーはさっき部室でばっちり見っちゃったけどね! 橘先輩たちに怒られて十五人ともちじこまってて小学生みたいになってたけど。
 元から小学生みたいな子もいたかもしれないけど、あの状態でおっきくなってたらきっと変態だよね。
 その、あとすぐにグラウンドに出されて現状ってわけなんだけど……。
「ねえ、やだこっちに走ってくるよ!」
 誰が言ったかわからないけど、その言葉の通り男子部員たちはこっちに走ってきた。
 しかも隠しもしないで!
「目をつむったり、顔を背けたら罰走! マネージャーも」
「えー!!」
 三年生マネージャーの言葉に不満げな声だけは上げるものの、誰も目をそむけるそぶりすらしていない。九割がエスカレーター式に上がってくるうちの学校じゃ、同世代の男の子のおちんちんなんて彼氏でもいなきゃ見るチャンスなかったもん。
 しかもそれが十五人。
 緊張でちっちゃくなったおちんちんを上下にポヨポヨさせながら走ってくる。
 恥ずかしそうに顔を真っ赤にしながらも、先輩の命令で大事なところを隠せないととこの子達の姿にみんな大爆笑。
「皮かむってる〜」
「弟よりちっちゃ〜い」
「毛も生えてないじゃん」
 そんな声の中、十五人はあたしたちの前に整列。
 もちろん両手は後ろで組んでおちんちんはまるだしのまま。
「なんだよ、うちの男子は素ちんぞろいか?」
と、マネジャーリーダーの渡井先輩。
「みんな女子が怖くってちじこまってんですよ」
 笑いながら二年生のフォワード、橘先輩とツートップを組み片瀬先輩がやってきた。
「ホントはもっとデッカイところ見せてやんなよ」
 片瀬先輩はそういって男子キャプテンの阿部君の後ろに回ると背中から胸を押し付け始めた。
「ちょ、先輩っ!」
 あわてる阿部君。
「コラッ、逃げたり隠したりしたらあとでどうなると思ってんの?」
「だ、だけど先輩っ! や、やばいっすよ!」
 そんな阿部君の態度を見て片瀬先輩はますます悪乗りする。
「あれ? 形が変わってきたんじゃない?」
「ほんとだ! だんだんのびてきた」
「わっ、ボッキしだした!」
 その言葉どうり、阿部君のおちんちんは上をむき出すと、ピンク色の先っぽが半分くらい顔を出してきた。
「わ〜、阿部君結構おっきいんじゃない?」
「ホーケーじゃなくて良かったね♪」
 なんて女子の声に、阿部君は顔を真っ赤にしてうつむいて涙目になっちゃった。
「あれ? 和田君まで起ってんのよ!」
「ホントだ! って横山も起ってんじゃん」
「なになに? みんなつられてボッキしだしっちゃったの?」
 阿部君を見て自分が片瀬先輩にされてるのを想像したのか、男子たちの半分くらいがおちんちん大きくしだした。
「なんだよ、みんな結構普通っぽいんじゃん」
「短小包茎ばっかりじゃなくてよかったな」
「なんか一人だけ上向いてるのに大きさ変わらないやついるけどな」
 その言葉とそれに続く笑い声に、橘先輩の弟の優くんはなんともいえない表情で顔を背けた。
「なに? みんなおちんちん見れてそんなにうれしいの?」
 いつの間にか橘先輩が近くまでやってきた。
「あなたたち悔しいでしょ?」
 下半身丸出しで並んでるの男子たちの前に立つと先輩は言葉を続ける。
「悔しかったらこの気持ちを忘れない事! 悔しさはばねになるんだからね!
 じゃあ、今日は15点差で負けたからこのままグラウンド15周しなさい!」
「はい!」
 男の子たちは返事をするとまるで逃げ出すかのように走り始めた。
「これから毎週試合して、点差分おちんちん出して走らせようか?」
「え〜、毎週おちんちん見させられるんですか?」
「毎週おちんちん見られるの間違いじゃない?」
 あたしの言葉に先輩がそう応えると、グランドは笑い声で包まれた。